2015年11月

こんばんは。おはよう。

前回の続きです。
エミール・グリフィスがベニー・パレットをリング上で死に至らしめた翌年の1963年。
王者グリフィスに挑む26歳の若者がいました。
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彼の名はルービン・カーター。11歳で少年院から脱走してボクシングの道に入り、リングネーム「ハリケーン」を名乗って活躍しました。故郷に戻った際に警察官に見つかり残りの刑期ぶん刑務所に入れられましたが、出所後プロボクサーに。デビューからわずか2年でチャンピオンへの挑戦権を得ました。

クリスマスを間近に控えた12月20日、彼はわずか1ラウンドで王者グリフィスをノックアウト。あっさりとウォルター級チャンピオンの座を手にしました。

そんな彼の人生に転機が訪れるのは1966年。バーで3人の白人を射殺した罪で逮捕されました。有名ボクサーの逮捕は全米を騒がせましたが、この騒乱が20年にもわたって続くことになるとは誰も思わなかったでしょう。

陪審員に黒人差別主義者を揃えたとか、有利な証拠を検察が隠蔽していたとか、証人が司法取引で偽証を明かしたとか。今となっては真相はわかりません。
確かなのは、彼は無実を訴え続け、1988年に釈放されるに至ったということだけです。

このルービン・カーター事件を元にした映画が『ザ・ハリケーン』(1999)です。
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デンゼル・ワシントンが獄中のルービン・カーターを好演し、ベルリン国際映画祭男優賞、ゴールデングローブ賞主演男優賞を獲得しました。彼は撮影前1年間ボクシングジムに通って鍛えたそうです。 
彼が2014年に天寿を全うした際には、冤罪被害者支援団体の協力のもと世界中で『ザ・ハリケーン』の回顧上映が行われました。


こんばんは。おはよう。

まずはこちらの画像を見てください。
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ボクシングです。

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これはプロレスです。

リングを見比べてみてください。両者のリングの広さはほぼ同じです。
それでは何が違うのでしょう?

そう、ロープの本数です。


レニー・アブラハムソン監督の映画「Room」がたいへんな話題となっています。
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アカデミー賞の前哨戦として知られるトロント国際映画祭で観客賞を受賞し、作品賞と主演女優賞(ブリー・ラーソン)ノミネートはほぼ間違いなし。その他の主要賞にも期待がかかります。

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配給はA24 films。2013年に設立されたばかりの新興配給会社で、受賞すれば初のオスカーとなります。
今までの配給作品はソフィア・コッポラ『ブリングリング』、ハーモニー・コリン『スプリング・ブレイカーズ』など。あなたが好きそうですね。

そんなレニー・アブラハムソン監督が次回は「パレット事件」を映画化するそうです。

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ベニー・パレットは1937年キューバ生まれ。さとうきび畑の労働者からアメリカンドリームを夢見てボクサーの道に入り、1960年ウェルター級世界チャンピオンの座をつかみました。

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彼のライバルは1938年アメリカ領ヴァージン諸島生まれのエミール・グリフィス。19歳の時にNYに出てきて帽子職人見習いをしながらボクサーの道に進みました。プロ入り後わずか3年で24連勝し、その勢いのまま61年にパレットから王座を奪い取りました。

しかし半年後、今度はパレットが15ラウンド判定で王座を再奪取。
1勝1敗で迎えた62年、NYのマディソン・スクエア・ガーデンで3度目のリベンジマッチが行われます。

両者譲らない一進一退の展開。12ラウンド目に入り、疲れの見え始めたパレットにグリフィスは容赦なく襲いかかります。
パレットの身体がロープの間に挟まって身動きが取れない状態で、20発もの連打を浴びせました。
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レフェリーが制止したときにはすでに手遅れでした。救急車で運ばれるも、パレットは10日後に病院で息を引き取りました。

当時国民的人気を集めていたボクシングの全面禁止が議論されるほど米国に与えた影響は大きく、スポーツ史に残る悲惨な事件となりました。
ロープが4本に改定されたのはこの直後です。






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グリフィスは晩年、自身が両性愛者であること、試合前の計量で侮辱の言葉を吐かれたことを明かしています。





この1年後、グリフィスは同じくマディソン・スクエア・ガーデンでもう一回歴史に残る試合に関わることになります。その話は次回。

Y

こんばんは。おはよう。

表参道のエスパス・ルイヴィトンでやっていたフランク・ゲーリーの展覧会に行ってきました。
2014年10月にパリ西部ブーローニュの森にオープンしたばかりの新美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィントン」 についての展覧会です。
 
狭いスペースですが毎度空間を最大限に使った展示をしていますす。
模型、ドローイング、映像とマルチメディアな展覧会でした。

偶然にもパリのテロの数時間後に訪れました。会場にはフランス人も何人かいましたが、もしかしたらまだ情報を知らなかったかもしれません。

ちなみにフォンダシオン ルイ・ヴィトンのオープニング展覧会はオラファー・エリアソンのインスタレーションでした。
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フランク・ゲーリーといえばシンプソンズに出演したこともあります。

丸めて捨てた紙から建築の着想を得たというセルフパロディです。

長年の友人であるシドニー・ポラックが監督したドキュメンタリー『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』があります。
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グッゲンハイム・ビルバオやLAのディズニーホールを取り上げています。デニス・ホッパーやロバート・ラウシェンバーグといった著名人も出演しています。

シドニー・ポラックはこの映画の制作の3年後、がんで亡くなります。初めてのドキュメンタリーにして最期の映画となりました。

Y

こんばんは。おはよう。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演、オリバー・ストーン監督のウィキリークス創設者エドワード・スノーデンの伝記映画「Snowden」(2016年5月13日公開)にニコラス・ケイジが出演するというニュースを目にしました。

ニコラス・ケイジは基本的に自分が主演でないとオファーを受けないことで知られているので、助演は非常に珍しいです。記憶にあるのは『キック・アス』のクロエ・モレッツの父親役くらいかな?

そこでニコラス・ケイジはどのくらい助演していないのか? を検証してみました。最近の公開作から順にさかのぼっていきます。

1.Pay the Ghost(2015) 主演
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2.The Runner(2015) 『コンテンダー』主演 
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3.Dying of the Light(2014) 『ラスト・リベンジ』 主演
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4.Left Behind(2014) 『レフト・ビハインド』 主演
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5.Outcast(2014) 『ザ・レジェンド』 主演
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6.Rage(2014) 『トカレフ』 主演
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7.Joe(2013) 『グランド・ジョー』 主演
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8.The Frozen Ground(2013) 『フローズン・グラウンド』 主演
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9.Stolen(2012)  『ゲットバック』 主演
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10.Ghost Rider: Spirit of Vengeance(2011) 『ゴーストライダー2』 主演
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11.Trespass(2011) 『ブレイクアウト』 主演
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12.Seeking Justice(2011) 『ハングリー・ラビット』 主演
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13.Drive Angery(2011) 『ドライブ・アングリー3D』 主演
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14.Season of the Witch(2011) 『デビルクエスト』 主演
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15.The Sorcerer's Apprentice(2010) 『魔法使いの弟子』 主演
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16.Kick-Ass(2010) 『キック・アス』 助演
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やっとたどり着きました。ここまで本当にすべて主演でした。
最後にニコラス・ケイジがブラック・スワンでアカデミー賞を受賞したときの画像も載せておきます。


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こんばんは。おはよう。

少し前のニュースですが、「反日映画」と叩かれて公開中止になっていたアンジェリーナ・ジョリー監督『Unbroken』の公開が1年遅れで決まりました。
配給に名乗りを上げたのはビターズ・エンド。Twitterでは英断と讃えられていました。
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 邦題は『不屈の男 アンブロークン』、上映館はイメージフォーラムに決まりました。
ユニバーサルの海外配給部門ユニバーサル・インターナショナル・ピクチャーズのダンカン・クラーク社長とアンジーは日本公開に向けて複数の配給会社と何度も交渉を重ねていたそうです。 
『雪の轍』『サンドラの週末』『ニーチェの馬』などを配給する(普通の人には)地味なビターズ・エンドですが、思わぬ形でスポットライトを浴びることになりました。

私はNY行きの機内で見たのですが取り立てて推すところもない普通の映画でした。 
日本軍将校を演じるMIYAVIの演技が思いのほかよかったです。MIYAVIのライブは何度か行ったことがあるので……。
ちなみに日本では偶然ですが『名もなき塀の中の王』『ベルファスト'71』とジャック・オコンネルの過去の主演作が立て続けに公開されています。

 

配給といえば、楽しみにしている『ザ・ロブスター』 の日本配給がファインフィルムズに決まりました。ちょっと意外でした。
ファインフィルムズは近年は韓国映画を主に配給しています。 『無頼漢 渇いた罪』『犬どろぼう完全計画』『愛の棘』『野良犬たち』など……。

ファインフィルムズは最近だと『ダラス・バイヤーズクラブ』を当てました。大手配給会社は当たらないと読んで敬遠したのでしょう。実際公開時はプロモーションもあまりなく、上映館は都内3館だけでした。
ちなみに製作はボルテージ・ピクチャーズ、米国配給はフォーカス・フューチャーズ。どちらも賞レースに絡んだ経験がほとんどありません。まさに降って沸いたようなアカデミー賞でした。
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フォーカス・フューチャーズは今年はエディ・レッドメインの『The Danish Girl』、キャリー・マリガンの『Suffragette』の2本を送り出しています。作品賞のダブルノミネートもあるかもしれません。
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ファインフィルムズは去年『マチェーテ・キルズ』なんてのも配給してました。
こちらの米国配給はオープン・ロード・フィルムズ。やはりあまり賞レースに絡むことのない比較的小さな会社ですが、去年はオスカーまであと一歩のところまで行きました。
怪作『ナイトクローラー』でアカデミー脚本賞を狙いましたが、惜しくも『バードマン』にさらわれました。
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そんなオープン・ロード・フィルムズ、今年は本気でアカデミー作品賞を狙いに大キャンペーンを張ってきています。獲得すれば初めてのオスカー。社運かけてます。

そう、それが『SPOTLIGHT』。
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マイケル・キートンは今年もアカデミー賞会場に呼ばれそうですね。

こんばんは。おはよう。

天王洲アイルに今夏できたばかりの画材屋「PIGMENT」に行ってきました。

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なぜ天王洲アイルの倉庫街という辺鄙なところにあるかというと、寺田倉庫という物流会社の社長がオーナーをしているからです。
台湾に行った際、現地のアーティストに「高級な顔料が少なくなって日本に買い出しに来ている」という話を聞き、貴重な顔料を安定して提供しようと思ったのがきっかけだそうです。

中はこんな感じ。
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まず目を引くのが壁一面に並んだ顔料。3200色あるそうです。

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 iPhoneのパノラマで撮ろうとしたらゆがみました。
手前右にあるのは硯のコレクションで、高いもので1個100万円するそうです。
左の壁では天然膠が販売されています。

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 青だけでこんなに。

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 黄色だけ。

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 刷毛もたくさんあります。馬、羊、猪、化学繊維など……。

 寺田倉庫は変わった会社で、
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ホームページを見てもこのようにワインとアートの話ばかりで本業のことはほとんど書かれていません。熱心な社長ですね。
若手芸術家を発掘するアワードを主催したり、12月からは現代アートをレンタルするサービスも始めるそうです。
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日経MJの記事から。
来年には坂茂と組んでやはり倉庫街に建築模型専門のミュージアムを開館するという話も……。素敵なお金の使い方です。

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